英語学習のマトリックス
英語の学習を「楽しいか苦痛か」および「即効性があるか否か」という2つの基準で分類してみましょう。すると全部で4つの領域ができます(注、これはあくまで大まかに分けたものであり、実際は同じ領域の中でも別の領域に近いものもあるでしょうし、学習者の英語のレベルによっては、あるいは、工夫しだいでは領域が変わってくるものもあります)
A領域(楽しいが即効性はない) | B領域(楽しくて即効性もある) |
・ネイティブの友人とのフリートーク ・映画館で洋画を観る ・DVDで洋画を観る ・海外旅行 ・英会話喫茶でのフリートーク ・日本人だけの英会話サークル ・英語の雑学的な書籍を読む ・英語の歌を聞く |
・ネイティブとのマンツーマンレッスン ・シャドーイング ・写英 ・興味のある内容の書籍・雑誌を読む ・興味のある内容のCDを聞く ・百科事典でボキャビル |
C領域(苦痛かつ即効性もない) | D領域(苦痛だが即効性はある) |
・(日記をつけない人が)英語で日記を書く ・(手紙を書かない人が)ペンパルと文通する |
・単語カードでボキャビル ・英語の学習用CDを聞く ・英字新聞をくまなく読む ・受験用の問題集を解く ・通信教育 ・各種英検の受験校に通う ・学習参考書を読む |
A領域は「楽しいが即効性はない」という領域です。「習うより慣れろ」の領域と言ってもいいでしょう。この領域の学習方法は、すぐに実力向上に結びつくことはありません。片言の英語しか話せないレベル、すらすらと読めないレベルにとどまり、試験においても高得点には結びつかないでしょう。ただ、楽しく学んでいるかぎり、やめる必要もありません。そのまま続けてもいいでしょう。
B領域は「楽しく、かつ、即効性もある」という領域です。この領域の学習方法を続ければ、やがて英語が好きになることは請け合いです。しかも実力もつきます。なお、この領域の学習方法の一つである「写英(しゃえい)」とは筆者が独自に生み出した方法ですが、具体的には、英語の書籍を読んでいるときに感銘を受けた箇所に線を引いておき、後にノートにその箇所を書き写すという単純なものです。
C領域は「苦痛で、かつ、即効性もない」という領域です。この領域の学習法は苦痛であるばかりでなく、実力も思ったほどつきません。また苦痛であるため、三日坊主になりがちです。おすすめできる学習方法ではありません。
D領域は「苦痛だが即効性はある」という領域です。多くの日本人は、大学受験や各種英検のためにこの領域で英語を勉強してきたはずです。たしかに点数を上げるには最も効果的ですが、もともと興味があって学習してきたわけではないので、点数を上げる、あるいは試験に合格するという目的を果たしてしまえば、学習をやめてしまう可能性があります。
英語の学習が楽しく思えないという人は、C領域やD領域でしか英語と接してきていない人です。このような学習方法は苦痛なだけで、いつまで経っても英語が楽しめるようになりません。英語を使う仕事についた人であれば、その後も研鑽もかねて英語学習を続けていくでしょうが、C領域やD領域の学習方法を延々と続けても、英語が楽しめるようにはならないでしょう。
筆者がお勧めしたいのはB領域の学習方法ですが、実力をつけるという観点からいえば、C領域の学習方法も交えることが理想的です。ただ、C領域は、あまり楽しくない分、意志の力が必要ですから、多忙な人であればあるほど途中でやめたくなるでしょう。そうならないためにも、C領域の学習は、その苦痛を軽減しながら続けることが大切です。息抜き、あるいは気分転換としてA領域もときどき取り入れるといいでしょう。
結論として、筆者がお勧めしたいのは、B領域の学習方法を主体にして、しかも、ときどき楽しむためにA領域の学習方法を、実力を効率よく向上させるためにC領域の学習方法を取り入れながら学習することです。