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英語早期教育の是非

 平成23年から小学校5年以上の英語の授業が始まりました。その「目標」の三本柱は以下のとおりです。

①    英語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深めること

②    英語を通じて、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図ること

③    英語を通じて、英語の音声や基本的な表現に慣れ親しませること

 現在、小学校3年生からにしようという案まで出ているありさまで、これが多くの論争を生んでいます。 

 みなさんは、英語の早期教育に賛成でしょうか、それとも反対でしょうか。それはどういう理由からでしょうか。 

 反対論者の一人である慶應義塾大学名誉教授の言語学者・鈴木孝夫氏は次のように述べています(『小学校での英語教育は必要ない! 』)。

「小学校で最もたいせつなのは、一にも国語、二にも国語、三にも国語、四にも国語…。ところがすでに、その国語力の惨状が伝えられている。英語遊びに割く学習時間があるならば、国語の勉強時間を増やすべきである」

「小学生から英語をはじめて“国際人”を育てるなどというくだらない妄想は捨てて、ちゃんとした日本人をつくることだ。それには何よりもまず、日本語をしっかり教えること」

  渡部昇一氏も反対論者の一人です。同氏は『英語の早期教育・社内公用語は百害あって一利なし (一般書) 』という過激なタイトルの著書の中で、鈴木氏の意見に賛同して次のように述べています。 

「まさにそのとおりです。母国語もみにつけていないうちに英語を教えるというのは、ふつうの状況においてはきわめて危ういことなのです(中略)。付け加えれば、母国語もマスターできていないのに英語を教えても無意味だと論点も重要です」 

 渡部氏はその根拠として、P・G・ハマトンの著書を引き合いに出し、ハマトンが観察したところ「幼児のうちはつぎつぎに国が変わっても、いともたやすくその土地の言葉を覚えるけれど、別の国へ移ると、前の言葉は何の痕跡も留めずに忘れてしまい、また新しい言葉をきわめて容易に習得する」のだからと述べています。 

 しかし、この主張には首を傾げざるを得ません。たしかに母国語も完全でない小学生の段階で母国語を教えるのを一切やめて、英語のみの生活を強いるのであれば、国語を忘れてしまうリスクもあるでしょう。しかし、ハマトンが観察したのは、ヨーロッパ大陸の国々を移住した子供たちなのです。たとえば、イタリア人がフランスに移住した場合、イタリア語を使わなくなるからイタリア語を忘れてしまうという話なのです。それに対し、日本における英語早期教育は、海外に移住することを強いるものでないことは当然のこと、従来どおり日本で生活をしながら国語の授業も受け続けるのです。ですから日本語を忘れるはずはありませんし、英語にしても小学校で学んだ後に中学から本格的な授業が始まるわけですから忘れるわけはありません。 

 では、英語早期教育によって日本語に悪影響が及ぶというのでしょうか。筆者は悪影響などほとんどないと考えます。国語の重要性を軽視するつもりはありませんが、週に1時間ほど英語の授業を行ったからといって、それが直接の原因で国語力が低下するとも思えません。英語の授業数にもよりますが、週1時間程度であれば、悪影響はほとんどない、むしろメリットのほうが大きいと考えます。 

 では、そのメリットとは何でしょうか。

 英語早期教育賛成論者の中嶋嶺雄氏は、幼いうちに英語に触れたほうがずっと効果的であることを述べていますが、筆者もこの点は大きいと考えます。 

 結論づけると、筆者は外国語の早期教育は(それが他の科目を学ぶ上で妨げにならない程度、たとえば週1時間程度のものであれば)賛成です。メリットとデメリットを天秤にかけた場合、メリットのほうが大きいと考えるからです。ただ一点筆者の理想案を述べるとすれば、学べる外国語を英語のみに限定するのではなく、3か国語くらいの中から選択できるようにするのがいいと考えます。小さいときから学べる外国語を英語のみに限定することは、ややもすれば英米至上主義につながりかねないと危惧しますし、また自分の好きな言語を選択させることによって、英語嫌いになる生徒の数を抑えることもでき、そのような生徒の中から英語以外の言語(例えば、中国語やフランス語など)に堪能な生徒が生まれる可能性もあると考えるからです。