ソフィア・外国語研究協会

ソフィア・外国語研究協会は、
ボキャブラリーに特化した
語学検定試験を提供しています。
トップページサイトマップ お問い合わせ

油断できない「分かり切った英語」

 筆者はイギリスに留学していたころ、分かり切っていると思っていた英語が実際には通じなかったことも多々ありました。

 たとえば、日本語でいう「ブラックコーヒー」と英語でいう「black coffee」は少し異なっているのです。

 当時、筆者が書いたエッセーの一部を紹介しましょう。

 イギリスであるコーヒーショップに行って、”Hot coffee, please.”と頼んだら、親切にと言うかおせっかりと言うか、砂糖もミルクも入れたものが出てきた。しかし、私は砂糖やミルクが入っていては体が受け付けない程の大のブラックコーヒー党なのだ。でもその時は、今更返すのもなんだからと日本人的(?)に引き下がってそのまま我慢して飲むことにした。

 しかし、二度と砂糖・ミルク入りのコーヒーなんて飲まされてたまるものか。次回は戦略をたててそのコーヒーショップに臨んだ。戦略と言ってもたいしたものではない。”Black coffee, please.”と言えばいいだけのはなしだ。これで万事解決、簡単明瞭。もう一度同じ店員に、”Black coffee, please.”と言ってやった。してやったり。今度は黒いコーヒーが出てきた。やれやれと思って飲んでいると、ムッ。なんと砂糖が入っているではないか。私は「違いの分かる男」だ。「砂糖の入ったブラックコーヒーなんて」飲まされてたまるか。(”Coffee, please.”と頼んで砂糖ともミルクも入れて出すところは例外中の例外ではあるが、ミルクは入れるかどうかを聞かずに入れて出すところは多い)。

 しかし、他の店に行ってもcoffeeの注文に悩まされ続けた。”BLACK coffee, please.”と”Black”のところを強調して言っているのにもかかわらず、必ず”Any sugar?”と聞き返されるのだ。だから私は決まって、”No! No Sugar,please.”と答えなければならなかった。 

  しばらくしてわかったことだが、イギリスではミルクが入っていなければ、砂糖入りでもblack coffeeと言うのだ。砂糖を入れても色は変わらないから理屈としてはイギリス人のほうが合っているのだが、それがわかっていてもやはり”BLACK coffee, please.”の後に”Any sugar?”と聞かれれば、返答するのがどうも面倒でしかたがない。日本で言う「ブラックコーヒー」に一発で命中させようと思えば、black, sugarless coffeeとかblack coffee without sugarと言えばいいのだが、これを実際に言ってみたら、今度は”Pardon?”が待ちかまえていた。

 このように日本の「ブラックコーヒー」と英語の”black coffee”のschemataには少しずれがあるのです。(schemataとは一般の人々が常識的に備えている知識構造のことをいう。たとえば、「食堂」と言えば、一般の人々はそこにテーブルや椅子が置いてあり、人々がお金を払って食事をするところであるという大まかなイメージを思い浮かべるだろうが、そのイメージのこと)

 真に英語ができるようになるのは、英語を使っているときは、日本語のschemataにとらわれずに、英語のschemataで考えられるようになることです。black coffeeはほんの一つの例にすぎませんが、分かり切っていると思っている英語でも本当は分かっていないものもあるものです。油断は大敵です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>