TOEICで高得点を目指すことは有意義か
TOEICは今や年間の受験者数が英検のそれをも凌駕し、英語学習者でなくてもその存在を知らない人がいないくらい有名になりました。
しかし、筆者が大学を卒業するとき、企業に採用面接に出向いて行っても、TOEICを知っている人はほとんどいませんでした。
当時、英検は準1級がなかったため、筆者が企業に申告できる英語の資格といえば「英検2級」しかありませんでした。TOEICでは700点近く取得していましが、それを申告したところでそれがどの程度の実力なのかを知っている人がいなかったので、申告する意味がなかったのです。
それが今やTOEIC万能主義かのような風潮すらあります。
なぜ、TOEICはここまで伸びたのでしょうか。
筆者が思うに、TOEICは日本人のメンタリティーにぴったり合ったからでしょう。
ご存じのとおり、TOEICにはリーディングとリスニングしかありません。島国で、英語を話す機会の少ない日本人にとっては非常に受けやすい試験です。
筆者は過去、イギリスに留学していたことがありますが、そんな筆者でも、帰国してからは英語を話す機会など、ほとんどといっていいほどありません。東京のど真ん中に住んでいてもそうなのです。
街で外国人に英語で道を尋ねられることも、せいぜい5年に1回程度くらいしかありません。しかも、せいぜい1分足らずの会話にすぎません。
もちろん、英語が話したければ、それなりに英語を話す機会を作れるでしょう。ただ、ごく普通に生活している以上、ひとりでに英語を話す環境が整うということは、日本に住んでいる以上はありえないことなのです。
ということで、筆者が莫大なお金を費やして留学し、英会話能力が高まったといっても、それを生かせる仕事につかない限りは、宝の持ち腐れになる可能性が高いのです。
そうかといって、英会話能力を使用するために頻繁に海外旅行に行くというのもおかしな話です。
でも、筆者は留学したことを後悔していないどころか、むしろ良い経験をしたと思っています。というのも留学したおかげで、しっかりと英語の書籍が読めるようになったし、英語の動画も理解できるようになったからです。
そう、英会話能力が生かせなくても、留学時代に磨いたリーディング力とリスニング力は十分に生かせるのです。そして筆者はそれだけでも十分に価値のあることだと思っています。
その点、TOEICはリーディングとリスニングに特化した試験ですので、日本人には受けやすいし、またTOEICで高得点を取得することを目指して努力すること自体は価値のあることだと思っています。
英会話能力に秀でたある人が「TOEICでいくら高得点をとっても、話せなければ何の意味もない」と述べたのに驚いたことがありますが、筆者は、たとえ英語が話せなくても、リーディングとリスニングができればそれなりに価値があると考えており、ゆえにTOEICで高得点を目指して勉強することにもそれなりの価値がある、と考えています。