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出版翻訳家に必要な資質・能力

 ひとくちに出版翻訳家といっても、さまざまなジャンルの書籍がありますので、求められる資質・能力についてもジャンルごとに多少の差はあるものと思われます。

 例えば、小説を訳す場合とギネスブックを訳すのとでは求められるものが異なるのは容易に想像できるでしょう。ただし、出版翻訳という一つのくくりで共通するものもあると考えられますので、ここではそれについて見ていきましょう。

 小鷹信光氏は翻訳者の能力や適性を計る物差しとして大別して「資質」「解釈力」「鑑賞力」「表現力」の4つを挙げています。そしてこれら4つはさらに3つに細分化されます。すなわち「資質」は直感、想像力、根気に、「解釈力」は語学力、慣用表現、資料活用、「創造性」は文章構成力、創造性、文学的素養、「鑑賞力」は対象への関心、理解力、背景把握です。

 小鷹氏は文芸作品の翻訳を手がけておられたので上記のような分類になったものと思われますが、筆者は主にノンフィクションの翻訳を手がけてきましたので、若干、異なる見方をしています。ただし共通するところもありますので、小鷹氏の物差しを参考にしながら出版翻訳家に最低限必要な資質・能力について考えてみたいと思います。

 第一に「資質」です。小鷹氏はこの1つとして根気を挙げておられますが、筆者はこれこそが出版翻訳家に最も必要な資質ではないかと考えています。短期間で短い文書を訳す実務翻訳と異なり、出版翻訳は長期間で大量の文章を訳すことになります。毎日毎日こつこつと訳していかないかぎり、いつまでも終わりに近づきませんし、訳し終えなければ出版されることはありませんから、まさに最も重要な資質といえるでしょう。根気と似ていますが、孤独に耐えられるかとか誘惑に耐えられるかといった物差しも挙げておきたいと思います。

 第二に「解釈力」です。これは「外国語の実力」と言い換えてもいいでしょう。たとえば、英語の書籍を訳す場合は「英語の実力」、フランス語の書籍を訳す場合は「フランス語の実力」ということです。「外国語の実力」はリーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの4つに大別できますが、その中でもリーディングが最も必要とされるのは明白です。リーディング以外はできなくても翻訳することは不可能ではありませんが、できたほうが望ましいことは言うまでもありません。筆者は自身の経験から、「英語の実力」の目安は英検なら1級1次合格、TOEICなら860点を挙げておきたいと思います。また理解が困難な箇所を資料を活用して解読する場合もありますので資料活用能力も重要です。

 第三に「表現力」です。小鷹氏は「表現力」として文章構成力、創造性、文学的素養を挙げておられますが、筆者はこれを「翻訳力」と言い換えたいと思います。「翻訳力」とは単なる日本語による文章表現力のことではなく、原文の意味を伝えるのに最も適した表現を見つけだした上で表現する力のことです。格調の高いエッセイが書けるからといって、それがすなわち「原文の意味を伝えるのに最も適した表現を見つけだす力」もあるということにはならないからです。

 結論として、出版翻訳家に最低限必要な資質・能力は「根気」「外国語の実力」「翻訳の実力」の3つだと筆者は考えます。文芸翻訳を狙う人なら、上記3つ以外に小鷹氏のいう「鑑賞力」も必要になってくるでしょう。
 

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