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識別的理解、認識的理解、解釈的理解

 会話によるコミュニケーションが円滑に成立するには次の3つのレベルをクリアしなければならないということを覚えておきましょう。 

 その3つのレベルとは、識別的理解、認識的理解、解釈的理解です。

   ひとつひとつ見ていくことにしましょう。

  識別的理解とは「発話における語または文レベルの要素の認識」のことを言います。平たく言えば、発話者の言っている言葉が聞き取れているということです。

  外部の騒音の有無、発話者の音量、明快さ、話すスピードによっては、識別的理解にいたらないケースもありますが、その場合は聞き直すことで識別的理解にいたることが可能です。

  認識的理解とは「話されたことまたは活字にされたことによって伝えられたことの認識」のこといいます。平たく言えば、発話者の言っている言葉の意味が分かるということです。

  同じネイティブ同士であっても、たとえば、アメリカとオーストラリアでは文化が異なるため、アメリカ人とオーストラリア人の会話においては、識別的理解は完璧に理解しあえても、認識的理解にいたらないケースもあります。

  その例として『世界の英語と社会言語学―多様な英語でコミュニケーションする 』には次のような例が挙げられています。

 オーストラリアに住み始めてすぐディヴィッドはパーティに招かれ、一皿(a plate)をもってきてほしいと頼まれた。

「もちろん。ほかに足りないものはない? 例えばグラスとかナイフとかフォークとか」

「ないよ。食器はたくさんある。ただみんなで分けられるような食べ物をもってきてほしいんだ」

 ディヴィッドはすぐに理解した。母語話者として彼は言葉はわかっていたけれども、その意味を誤解していたのだと。

 認識的理解にいたるには、その言葉が話されている文脈的意味も理解しなければならないという良い例といえます。

 解釈的理解とは、発話者の発言の背後にある意味の認識のことです。平たく言えば、発話者がその言葉を使うことによって何を意図しているかが分かるということです。

  識別的理解も認識的理解もできていても、解釈的理解ができていないと、会話がスムーズにいかないことがあります。

  同書にはその例として次のような例が載っていました。

  場所はアメリカ。日本人女性がアメリカ人の友人からディスコに誘われました。その日本人女性はディスコが嫌いだったので、やんわり断るため、こういいました。

 「ディスコはあまり好きじゃないけど、考えておくわ」

  その日本人女性は丁寧に断ったつもりだったそうです。

  ところがそう言われたアメリカ人は「断られた」とは思っておらず、ディスコに行く日に再度彼女に電話をして、こういったそうです。

 「準備できた? これから迎えに行くところよ」

  その日本人女性はアメリカ人からその電話をもらって、驚いて不快に感じました。

  たしかに日本では、「ディスコはあまり好きじゃないけど、考えておくわ」というハッキリしない言い方でお茶を濁されると、「ああ、この人はあまり行きたくないのだな、この人が自分のほうから行きたいと言って来れば別だけど、そうでない限り、もう私のほうから、しつこく誘わないほうがいいだろうな」と思う人が多いでしょう。

   しかし、アメリカでは「ディスコはあまり好きじゃないけど、考えておくわ」という言い方では、断られたとは解釈しないようです。

  会話によるコミュニケーションはしっくりいくというのは、上記3つのレベルをすべてクリアしてのことですので、そのためには異文化へ意識を向け、解釈的理解を高めることも不可欠と言えるでしょう