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英語は日本人の何割に必要か

 英語は日本人の何割に必要かという議論はさまざまなところで頻繁に行われています。そこで何人かの主張を取り上げて検討してみましょう。

 まずは成毛眞氏です。同氏は著書『日本人の9割に英語はいらない』の中で独自の計算方法にて「1割は英語が必要」「残りの9割は勉強するだけムダ」と述べています。

 同氏は海外在留経験者1077万人、外資系雇用102万人、大型ホテルや外国人向け旅館の従業員や新幹線の車掌の合計100万人をすべて足すと1279万人になり、それが日本人の1割に相当することを根拠に「1割は英語が必要」と述べています。

 しかし、これは英語が必要か否かを(1)海外に在留したことがあるか否か、(2)外資系企業の従業員か否か、(3)大型ホテルや外国人向け旅館の従業員または新幹線の車掌か否かという3つの基準でしか判断していないことになります。そして上記の3種類の人以外の「9割は英語を勉強するだけムダ」というわけです。

 はたして、この計算方法は妥当といえるでしょうか。

 「海外在留邦人」と一口にいっても非英語圏に在留する人もいれば、3ヶ月で帰国する人も含まれています。そのような人たちも含めたすべての海外在留邦人に英語が必要というのは無理があるでしょう。というのも、英語を必要としない国もありますし、仮に英語圏に在留するとしても3ヶ月だけ在留して帰国し、英語とは無縁の職場に就職する場合、英語は(仕事では)必要ではなくなるからです。そう考えれば、海外に在留したことがあったか否かを判断基準にして、英語が必要か否かを論じるのは無理があると考えられます。
 
 次に外資系企業の従業員か否かという基準を考えてみましょう。外資系といっても、英語圏の企業だけではなく、非英語圏の企業も含まれています。成毛氏はそのすべてをひっくるめて「外資系企業」として計算していますが、はたしてそれは妥当でしょうか。もちろん非英語圏の企業に勤める場合であっても英語ができるに超したことはないでしょうが、できなくても一向にかまわない場合もあるでしょう。さらにいえば外資系企業の中にも英語を必要としない部署もあります。そういったことをすべて度外視して、外資系企業の従業員はすべて英語が必要というのは無理があるでしょう。

 最後の基準はどうでしょうか。大型ホテルの従業員といっても全員が全員英語が使える必要はないわけですし、新幹線の車掌にしても皆が皆、英語が必要というわけでもないでしょう。逆に、大型ホテルの従業員や新幹線の車掌をカウントするくらいなら、英語教師や翻訳家、通訳者といった英語のスペシャリストをカウントするほうが妥当といえるでしょう。なぜなら、英語のスペシャリストは職業柄、英語が必要なことは明白だからです。

 また成毛氏は上記の3つの基準に当てはまる人をそれぞれ別個に計算し合計を出していますが、複数の基準に当てはまる人も当然います。たとえば「海外に3ヶ月在留した経験を持つ外資系企業の従業員」もいれば、「外資系の大型ホテルの従業員」もいるわけです。したがって、単純に3つの数字を足してしまうと、複数の基準にあてはまる人を二重にカウントしてしまうことになり、計算自体がおかしいことになります。

 以上の理由により、成毛氏の「1割に英語は必要」とする根拠は若干無理があるといえるでしょう。

 また成毛氏は「残りの9割は勉強するだけムダ」と言いのけていますが、仕事で直接英語を使わなくとも、あるいは、海外に出ることがなくとも、海外を知る窓として、自分を高めるための手段として英語を学び、効果を上げている人も(数は少ないかもしれませんが)いることでしょう。そうした人たちにとっては「勉強するだけムダ」というわけではないと考えます。そういう高貴な意思をもっている人たちには、それはそれで英語は必要といっていいと筆者は考えます

 以上、成毛氏の「1割は英語が必要」「残りの9割は勉強するだけムダ」という主張について検討してみました。

 

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