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なぜ翻訳書が出版中止になることがあるのか

 出版翻訳家と出版社の間に起こる最大のトラブルの原因は出版中止と言えるでしょう。

 筆者も何度か出版中止を経験していますし、筆者以外の人から出版中止になった話を聞いたことも数回ありますから、おそらくそうした経験のある出版翻訳家もけっして少なくはないものと思われます。

 鈴木主税氏は『職業としての翻訳』の中で、出版中止になったときのことをこう述べています。

「こうした問題にぶつかっていつもやりきれない思いをするのは、出版社の対応がいつも不誠実なことです。問題の当事者をこちらと接触させないようにすることなど序の口で、自分のほうの都合は隠しておいて、お前の仕事が不備だからなどと難癖をつけるのをはじめとして、いろいろと卑怯な対応をするのです」

 では、なぜ出版中止になることがあるのか、そして出版翻訳家としてそれを未然に防ぐには何をすべきかを考えてみましょう。

 まず出版中止になる原因から見てみましょう。筆者の経験から言えば、次の4種類の原因があります。

(1)あまり売れそうにない本だと判断された場合
 ほとんどの出版社が第一に考えていることは「売れる本」を作ることです。俗な言い方をすれば金儲けです。ですから「売れそうにない」と判断された本は出しなくないのです。編集者の中で英語が読める人はほとんどいませんから、翻訳されていない段階で、海外での売れ行きなどからいったん「売れそうだ」と判断しても、訳文を読んだあとになってから「日本では売れそうにない」と判断し直すこともあるのです。

(2)編集者が期待していた内容とは異なっていた場合
 上記のケースと似ていますが、これも出版が中止になる原因の一つです。海外での売れ行きや評判などから「良さそうな本だし、売れそうだ」と判断したものであっても、訳文を読んだあとになってから「これは日本の読者には受け入れられないだろう」と判断し直すこともあるのです。

(3)出版社側と原著者側の交渉が決裂した場合
 翻訳書出版にあたり、通常は出版社が原著者側と交渉して日本語翻訳権を取得し、その後に出版翻訳家に翻訳を依頼することになります。しかし、出版翻訳家が翻訳をしている最中に(あるいは終わった後になって)出版社側と原著者側が権利関係でもめることがあります。交渉が決裂してしまえば、翻訳作業がすべて終わっていたとしても、出版は中止になってしまいます。

(4)その他、出版社側の理由
 「売れる本」かつ「編集者の期待どおりの本」であっても出版中止になることがあります。たとえば、シリーズ物の翻訳書であれば、シリーズの他の翻訳書の売れ行きが悪ければ、シリーズが打ち切りになり、そのためにその「売れる本」かつ「編集者の期待どおりの本」も出版中止になることがあります。
 その他、出版事業部を縮小するからとか、社長の方針が変わった、といった理由で中止になることもありますし、出版社が倒産してしまえば文句の言いようもなく中止になります。

 出版が中止になることは、けっして多くはありませんが、稀にあることですので、出版翻訳家になろうと思っている人(あるいは実際に出版翻訳家になっている人)はトラブルに巻き込まれないように十分に気をつけましょう。特に出版社があまりに性急に仕事を進めたがっている場合は気をつけたほうがいいでしょう。トラブルを未然に防ぐには出版社と十分なコミュニケーションを取った上でお互いが納得のいく条件で出版契約書を交付してもらうのが一番です
 

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