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何か国語学ぶか

 「何語を学べばいいか」という質問に唯一の正解がないのと同じように、「何か国語学習すればいいか」という質問にも唯一の正解はないと言えるでしょう。

 1言語だけに絞るのもいいでしょうし、余裕があれば2言語でも3言語でも4言語でもいいでしょう。あるいは、挨拶だけでもいいから広く浅く学びたいという人なら興味の赴くまま50か国語でも100か国語でも学んでみてもいいかもしれません。『世界中の言語を楽しく学ぶ』の著者・井上孝夫氏は100か国語以上学んだそうですから、100か国語もあながち無理だとは言えません。

  ただし、外国人と接する機会がほとんどない日本人が独学で「読む楽しみ」「聴く楽しみ」を味わえるようになるにはという前提で考えれば、話は変わってきます。その前提で考えるとすれば、「自分が費やせる時間・労力・お金を考慮したうえで、最低限中級レベル以上まで到達できそうだと思えるだけの数を上限とすること」が望ましいと私は考えます。

 なぜなら初級レベルの実力だと「聴く楽しみ」はほとんど味わえませんし、「読む楽しみ」は味わえるにしても極めて限定的だからです。英語に関しては初級レベルの本でも容易に入手できますが、英語以外の言語に関しては、容易に入手できる初級レベルの本の数はそれほど多くはなさそうです。それではそれまでに費やした努力に対する報酬が少なすぎると思います。平たくいえば、せっかく苦労して勉強しても元が取れないのです。先述の井上氏も、次から次へと新しい言語を学んだあとで「多少理解できる程度の言語をいくら増やしてもそれだけのこと」だったと述懐されており、40歳を過ぎてからは、読む楽しみを味わうために数を絞ったそうです。

 一方、中級以上になれば、楽しみの度合いが急に大きくなります。中級以上になれば、映画のDVDを見ても理解できるセリフが多くなるので楽しみも増えますし、読める書籍の数も一段と増えます。中級以上になって初めて費やした労力が報われ始めるといってもいいでしょう。ですから、せっかく学習するのであれば最低限中級レベルまでは到達できそうかどうか十分に自問してから始めたほうがいいと思うのです。(あくまでおおよその目安ですが、独検なら2級レベル、仏検なら準2級レベル、伊検3級レベル、HSKなら4級レベルに到達できそうかどうか自問してから始めたほうがいいのではないかと思います)。

 理解できる言語の数が複数あれば、「読む楽しみ」「聴く楽しみ」もそれだけ楽しみの種類が増えるものです。2言語が理解できる人よりも3言語が理解できる人が、3言語が理解できる人よりも4言語が理解できる人のほうが、4言語が理解できる人よりも5言語が理解できる人のほうが、味わえる楽しみの種類が豊富といえます。

 ただし、学ぶ言語の数を増やせば増やすほどいいというわけではありません。というのも中級レベルまで到達するにはそれ相当の時間・労力・お金がかかりますし、一人の人間が言語を学ぶ上で費やせる労力・時間・お金には限度があるからです。似ている言語を知っていれば上達は早いとも言われており、私の経験からいっても、フランス語とイタリア語、スペイン語はお互い似ているので、そのうちの一つをマスターした後で別の言語を学べば、上達は早いです。しかしそれでも中級レベルまで到達するのは容易なことではありません。とはいえ1つの言語を中級レベル以上まで学習するのと、5つの言語を学んで初級レベルにとどまるのとでは、前者のほうが望ましいと私は考えます。理由はすでに述べたとおり、初級レベルの実力だと「聴く楽しみ」はほとんど味わえませんし、「読む楽しみ」は味わえるにしても極めて限定的だからです

 学習時間だけを考えてみても、効果的な学習をするには週に平均10~12時間が必要という説があります。つまり1日平均約2時間の学習が必要なのです。1日平均約2時間というのは想像以上に大変です。1年のうちには体調の優れない日だってあるでしょうし、知人友人とのお付き合いだってあるでしょう。その他、学習の妨げになることは多々あるものです。そういったことを考慮すれば、1言語でも大変なのですから、一度に2言語も3言語もやろうとすると時間的な負担だけでも相当大きくなります。同時に2言語やるとすれば一日平均約4時間、3言語やるとすれば一日平均約6時間という具合です。仮に3言語やるとして、一日平均約6時間という時間的負担に耐えられる一般社会人はいったい何パーセントいるでしょうか。

 しかも負担は時間や労力だけではありません。入門書をはじめとする書籍や辞書、検定試験などの出費がかかります。外国語学習は、お金が莫大かかる他の趣味と比べれば、お金がかからないほうだと思いますが、それでも何か国語もやっているとその費用もバカになりません。レベルがあがればあがるほど検定試験代も高くなりますし…。

 このようなことを考慮した場合、一度に3か国語以上手を出すというのは負担が大きすぎるので、仕事や家庭生活などに一定の時間・労力を費やす必要のある人は1言語(多くても2言語)に専念するのが賢明だと考えます。仮に2言語に取り組む場合であっても、一度に取り組むのは1言語にしておいて、ローテーションで回していくのが効果的だと思います。(例えば、1月から3月はイタリア語、4月から6月はスペイン語、7月から9月はイタリア語、10月から12月はスペイン語…というふうに)。私の経験から言っても、同じ日に2言語以上をやると脳にかかる負担が大きくなりすぎて頭がふらふらになるというのが率直な感想です。私はそういう経験を踏まえて一度に学ぶのは1言語だけにしておいて、ローテーションで回して学んでいるのです。

 以上、結論を述べると、「何か国語学習すればいいか」という質問に対しては、「自分が費やせる時間・労力・お金を考慮したうえで、最低限中級レベル以上まで到達できそうだと思えるだけの数を上限とする」というのが私の見解です。様々な事情を考慮したうえで、中級レベル以上まで到達できそうだと思える言語数が1言語なら1言語のみに専念するし、2言語できそうだと思えば2言語取り組むのが理想的だと思います。

 1言語はすでに中級レベルに到達している人の場合、その1言語をとことん極めるか、2言語目を始めるかは本人しだいです。そういう意味で「最低限中級レベル以上まで到達できそうだと思えるだけの数を上限とする」と上限を設けたわけです。