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英語公用語論は机上の空論

 船橋洋一氏は平成12年に英語公用語論を提唱しています。船橋氏は東大出身のコラムニストで「石橋堪山賞」「サントリー学芸賞」「吉野作造賞」など多くの賞を受賞したエリート中のエリートですが、そんな彼が提唱する英語公用語論の具体的内容をいくつか挙げ、検証してみましょう。(以下、1、2、3の抜粋箇所は同氏の『あえて英語公用語論』から抜粋しています)

1「日本の日本語、英語のバイリンガル人口を30年後に、全体の30%、中央政府職員では50%をする目標を設定する。(中略)以上はあくまでバイリンガル能力の持ち主の話である。ただ、一般にも英語人と基本的な意志疎通ができる水準の英語力をつけることを目指す」

 船橋氏はカナダを引き合いに出し、カナダが英仏のバイリンガル政策を取ってきた結果、30年の間に、全体で16%、中央政府職員で29%がバイリンガルになったことを挙げてい ます。
 しかし、(1)英語とフランス語は言語的に非常に似通っているのに対し英語と日本語は言語的にまったく異なること、(2)カナダが英仏バイリンガル政策を取ったにもかかわらず16%しかバイリンガルにならなかったこと、(3)英語は一般の日本人にとって使う機会も使う必要もない言語であることなどを考え合わせれば、日本の「全体の30%」をバイリンガルにするというのが机上の空論にすぎないことが分かるでしょう。
 「バイリンガル」をどのレベルの能力として捉えるかにもよりますが、筆者の感覚でいえば、仮に日本でバイリンガル政策を取ったとしても、30年でバイリンガルになるのは5%がいいところで、バイリンガル政策を取らないままであれば1~2%が関の山だと思います。30%というのはあり得ない数字です。
 また船橋氏は「以上はあくまでバイリンガル能力の持ち主の話である。ただ、一般にも英語人と基本的な意志疎通ができる水準の英語力をつけることを目指す」と提唱していますが、これも実現不可能でしょう。「一般」をどう捉えるかにもよりますが、たとえばアルバイト情報誌をくまなく見回してみると、英語力を要する仕事はごくわずかしかないことがわかります。こうした事情が一変して、ほとんどの仕事が「英語人と基本的な意思疎通ができる水準の英語力」を要するものになるということは想像できません。一般人の多くは従事している仕事に多くの時間を割くことを考えれば、上記の目標は実現不可能であるばかりか不必要であるともいえるでしょう。

2「中央政府と国会の公式文書は、日英両語で発表する。(中略)国立で成立した法律と国会の議事録は日英両語で作成する」

 これは、一見、国際化時代にマッチした目標のようにもみえます。英語人にとっては日本の公式文書が英語で読めることは大きなメリットがあります。しかし、この目標の達成のために日本が負う負担は計り知れないものがあります。筆者も日→英、英→日ともに実務翻訳の経験がありますが、完璧な日→英の翻訳をするには日本語の翻訳家だけでは無理であり、どうしてもネイティブチェックが必要です。ましてや公式文書なのですから、誤訳があってはならず、よってネイティブチェックは必要不可欠です。このような時間と労力、費用はだれが負担することになるのでしょうか。税金から割り当てるとすると、それに賛同する国民はごくわずかしかいないのは明らかです。なぜなら「公式文書は日本語だけでも一向にかまわない」という人のほうが圧倒的に多いからです。よって、この目標も実現不可能に思えます。

3「大学入試の英語科目は、高校3年のTOEFLの試験結果と、全国統一で実施する日本の歴史、文化、社会についての英作文で、構成する」

 船橋氏はご自身が東大出身であるからか、「高校3年生の英語力はこの程度であろう」という推測のもと、このような目標を掲げたのではないかと思えます。しかし、一般的な高校3年生にTOEFLは難しすぎて実力を判定するのに不向きであるし、日本の歴史、文化、社会の英作文も難しすぎます。一般的な高校3年生といえば、英検2級レベルに到達していない生徒のほうが多いくらいであるのに、そのような学生にTOEFLだの英作文だのを課すと英語嫌いを増やす結果に終わることでしょう。大学によって受験生のレベルも大きく異なることでもあるし、入試の英語問題は各大学が独自に作成するという今の制度のほうが望ましいといえます。

 以上、船橋氏の英語公用語論の内容を何点か挙げて検証してみました。

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